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「倒産は怖くない」というのが金融機関とゼネコンの本音

決算操作で黒字を取り繕いながら公共工事にあずかるか、それとも、稼いでも金利に持っていかれるだけなら、まだ多少なりとも体力のあるうちに会社更生法か和議を申請するかー東海の倒産をみるまではどのゼネコンも前者を選んだでしょう。

ところが今は違います。

 

銀行にとって怖いのは、裾野の広いゼネコンを倒産させて連鎖倒産を引き起こすことによる社会的指弾です。

しかし先の上場三社の倒産では、連鎖倒産は子会社に及んだだけで、東海の下請け組織「東興会」への影響は(ゼロではないが)予想したほどではありませんでした。

 

つまり、安心して倒産させることができると見切りました。

また、銀行に残された決算上の時間は長くないことも銀行の決断を後押しするでしょう。

 

また、ゼネコン側にとって会社更生法による倒産は最悪のシナリオではありません。

 

負債が巨額になり、現状はいくら稼いでもすべて金利に持っていかれます。

しかも、連帯保証のような債務保証で、身から出たサビとはいえ、他人の債権まで押し付けられて行く末は破産しかないようなら、債務を清算しゼロからスタートすることも有力な選択肢です。

 

足元の受注量は確保できているし、更生会社は元請けは難しいかもしれませんが、下請け工事には制限がありません。

 

長期にわたって蓄積した大手や準大手など、歴史が江戸時代までさかのぼる老舗は社名のブランドを手放すデメリットは大きいでしょうが、そうでないところは、半身不随でヨタヨタするより、いっそ倒産した方が再スタートに弾みがつくという考え方もできるでしょう。

最近の危ないゼネコン

最近の危ないゼネコンを見分ける方法は、

①3月期決済で支払い利息総額が営業利益を超えている。
②有利子負債が多すぎてその金利負担が営業利益で賄えない。③有利子負債の総額の割りに支払い利息額が異常に少ない(なぜかといえば、金融機関からすでに金利減免処置を受けている可能性が高いから)。
④未完成工事支払金という、工事が完成しない段階で下請け業者などに支払う代金の伸び率に対し、未完成工事受入金という、工事の完成前に発注者から支払われる頭金や着手金など前払い金の伸び率がはるかに低くなっている(これは金払いの悪い客の仕事でも飛びつくほど窮状)。

これからは返済が遅れていたり、滞っている開発業者の債務保証の返済をゼネコンに求める金融機関が増えます。
メインバンクが大手だからといって安心していられません。

熊谷組住友銀行、三井建設やフジタはさくら銀行で大手都銀だが、さくらは旧太陽銀行、旧神戸銀行、旧三井銀行と足並みが揃っていないから救済スキームをまとめられていません。

したがって、上記の条件に付け加えるとすれば、
⑤メインバンクに体力がないか、メインバンクとの関係がしっくりいっていない。

また、素人でもわかるのは、
①株価200円以下
②ゴルフ場の預託金返還やトラブルを抱えている。
という基準でしょう。

建設会社に隠れている巨額の債務保証

東証に上場しているゼネコン79社が抱えている借金・債務保証はざっと14兆円。

このうち70%が不良債権化というから容易ならざる事態といえるでしょう。

 

しかし、ゼネコンの倒産が現実になる前から、実態は14兆円なんてものではありません。

その倍はある、といわれてきました。

 

その証拠のひとつが東海興業が法的処理に踏み切ったとき明るみにした修正貸借対照表です。

 

これによると、最悪といわれた同社の96年10月期の有価証券報告書に記載された債務保証よりもっとひどい実態でした。

 

東海が7月8,9日に全国5ケ所で開いた債権者説明会の資料にした修正貸借対照表は、総資産は決算発表時の3523億円が1429億円も減額され、2094億円に修正されていました。

逆に総負債額は決算発表時の3436億円が5110億円に増額修正され、修正後のバランスシートは3016億円の債務超過でした。

 

つまり、総負債額の5110億円マイナス3436億円=1674億円が、全額とは言えませんが、ほぼ有価証券報告書に報告義務のない「隠れ債務保証」など、表に出てこない裏保障がいくつかあったのです。

 

「隠れ債務保証」の存在は大都工業にもいえました。

 

97年3月の同社の有価証券報告書の債務保証は251億円。

ところが修正値は651億円で400億円もサバを読んでいました。

30年増がコギャルと言い張っていたようなものです。

倒産の元凶・債務保証と完成工事未収入金の山

有利子負債と債務保証を合わせた額の上位20社のうち大手と一部例外を除いて、熊谷組=1兆414億円、飛島建設=8619億円(すでに会社更生法適用と変わらず見かけは1000億)、フジタ=7050億円、青木建設=6122億円、佐藤工業=5530億円、ハザマ=5370億円、三井建設=4930億円(いずれも1997年3月期)は、売上を借金がはるかに上回る死に体か、もしくはそれに近い状態といわれます。

 

これら7社は、すでに会社更生法を申請し再スタートを切った多田、大都より内容は悪い。

このほかにも、債務超過に陥っていた東海興業に近い経営不安を抱えるゼネコンが数社あります。

 

こんな状態でも倒産や自主再建断念をしないのは二つの条件が重なっています。

その1は「低金利政策」、2番目は公共事業というカンフル剤です。

 

まず、なぜゼネコンが有利子負債と債務保証を膨張させてしまったか検証しましょう。

 

ゼネコンは80年代からバブル時代にかけて、不動産投資で多額の負債を抱えたが、工事受注を前提にマンションやゴルフ場の開発事業者に代わって借金を肩代わりするという「債務保証」を乱発しました。

 

80年代は公共投資ゼロシーリング時代。

それで「建設冬の時代」といわれたが、この時期に請負型の経営から需要を創設する新しい型の企業への脱皮をどのゼネコンも競いました。

この需要創造を「造注」と呼びました。

大手ゼネコンの倒産は準大手・地方ゼネコンに波及するか

 1990年代に倒産した、東海興業、多田建設などの大手ゼネコンが地方にあったら簡単に倒産しなかったといわれています。

 

公共工事と地域経済が連動し、地方の有力企業が多い地方ゼネコンの危機は地方議会を混乱させるほどのインパクトを持ちます。

 

和歌山の紀陽銀行絡みで危機説が流れた浅川組や群馬から首都圏に営業基盤を広げた民間建築中心の井上工業、東海興業と同じく北海道拓殖銀行がメインだったことから経営が不安視された地崎工業、背任容疑でメインバンクの北國銀行頭取が逮捕された真柄建設などは、和歌山、群馬、北海道、北陸三県では重要な中核企業です。

 

特定の地方で強力な経営基盤を持ち「ドン」として君臨するオーケー家は、自民党にとって頼もしい選挙母体であり、地元ではマスコミや世論がこうした癒着関係に甘いです。

 

公共工事には地域間格差という隔たりがありますが、公共投資額を都道府県ごとに比較すると、その額が最も高い島根県と最も低い埼玉県との間にはなんと2.5倍もの開きがあります。

 

この理由は、地方では地域経済における公共事業への依存が高く、そういう地域から選出される県議や市町村議は、土建業者かその親類縁者が圧倒的に多いからです。

 

国政レベルの選挙で、彼等はゼネコン関係者と一緒になって集票マシンと化します。

現在の小選挙区制度では、全国規模のゼネコンより、地方の有力ゼネコンの方が選挙区が小さい分、大声で「ゼネコン振興」を主張できます。

「土建国家日本」の面目躍如です。